この研究の目的は、主語の位置にある「私は」の省略・非省略を分析し、日本語の叙述の類型という観点から、主題の省略・非省略の傾向に関する新しい考えを提示することにある。日本語の主語はよく省略されると言われている。もちろん、主語の位置にある一人称代名詞は文章や会話の中でも、原則として提示しなくてもよいと考えられている。しかし、省略できるのに関わらず省略しない文がしばしばみられる。なぜ省略できるのに省略しないのかという理由を探ってみたところ、時空間的なギャップと前景・背景と、この二つに関係があると考えられる。