摘要
現代日本語における擬態語は普通、文の非必須成分と見られる。だが、「しっかりする／？しっかりしない」「がっかりする／？がっかりしない」などのように、動詞と複合して文の必須成分になったほかに、否定との共起にはある制限が見られる。従って、本稿はまず、擬態語の多義性に着目し、擬態語と否定との関わりを考察してきた。その結果、動作の様態を修飾する擬態語には否定表現がある。しかしながら、動作の程度、言語主体の意志の有無、および動作主の心の動きなどを表わす擬態語は否定との共起に制限がある。また、擬態語自体に持っている評価という意味合いによって否定か肯定のどちらかを伴うようになることもある。更に、擬態語の語義そのものの違いによって程度副詞と見られるものもある。こうして、否定との関わりを通じて擬態語の文の中にある役割を再検討するほか、さらに意味分類だけでなく、構文との関わりによる擬態語の再分類も行ってみた。