学生の口頭発表、作文、ディスカッションでの発言などに按するなかで、その「内容」をどう受け止め、どう対応していくべきであるのか、しばしばとまどいを覚える。どう「評価」するかということにもつながってい問題である。それは、まず取り上げているテーマてや事象についての前提とな認識や理解が「定型化(固定化)」された知識や情報にとらわれており、その上に話が進められていくので、一面的な見方に支配され、内容が乏しいものとなってしまっているということに起因している。そして、用いる言葉をきちんと定義しないままに話を展開する結果、内容がはっきりしないものになってしまっているということがある。また、そうしたものを元に何らか比較対照を行なおうとするので、それもやはり不確かな内容のものとなってしまう。つまり、問題点は話の展開以前にあると言えよう。本稿は、このような問題背景に基づくとまどいの存在を前提に、日本語学科(外国語専攻課程)の語学科目における異文化理解にまつわる問題を、定型化された見方や言説の受け入れを留保しようとする力、そして分析力、思考力を学生に身につけさせることへの取り組みという視点から考えてみようとすものである。