本稿は、荒木(2017a)が提案した<自己内リフレクション>モデルを用い、教師が授業改革に踏み込むまでのもやもやした段階で起きたことを可視化しようとするものである。つまり、学生の学習モチベーションや学習効果の不振に悩む教師において、授業改革に踏み込むまでに何が起きていたか、それまで教師が意識せず持っていた「枠組み」がどのようなもので、どのように自分を縛っていたのか、その「枠組み」に気づくきっかけは何であったのか、そして「枠組み」を壊して見えてきたものは何か、さらに「枠組み」から離れた教師が教育現場に戻り学生にどのような働きかけをし、学生へどのような影響を与えたか、などについて述べる。また、苦しい現実に陥っている教師が「教師という役」から離れ、一個人に戻る視点も必要であることを述べ、問題にはまりこんでしまった状態から抜け出す方法論として、荒木(2017a)<自己内リフレクション>モデルを修正したバージョンを提案する。これにより、論文を発表し、投稿することを「不確実なことを数多くの留保つきで語れる場」として認識し、教師の「秘密の物語」を公で語ることによって、これからますます厳しくなっていく高等教育における言語教育に携わる教師間で、不安や問題、試行錯誤をシェアできるようになるきっかけとなれば幸いである。