近時の世界的な金融危機後、従来の企業経営を反省し今後の在り方を検討することは、経営学の主要な課題をなす。企業経営の評価については、利益や株価の大きさではなく、むしろ社会的ウエルフェアの向上・発展に対して如何なる貢献をなしているかにウエイトの置かれることが肝要である。そこで本稿では、企業の営利性と社会性の相即的な関係を「社会・企業・個人の三位一体化」という視点に還元し、特に、近江商人の「三方よし」説、渋沢栄一の「道徳経済合一」説、Ford の「公衆奉仕」論、Yunus の「多元的人間」観、およびMaslow の「自己実現」概念のもつ特質等に関する考察により、今後の経営学研究に資すると考えられる基盤的なエレメントが示される。