本研究は逆接複文における推論関係に着目し、接続助詞「けれども」および「のに」を論じるものである。本研究の主張は以下である。日本語の「けれども」は「pだから~q」という話者が考えた成立可能な推論が後件と対立することを表す。「のに」は「pだから~q」という話者にとって必然的に成立する推論が後件と対立することを意味する。「のに」が用いられる場合、話者の認知にある「pだからq」という推論は必然的なものであるため、その必然的なものと後件が対立すると、意外、不満などの気持ちが生じやすいと言えよう。さらに推論成立の可能性を序列関係として捉えることで、「けれども」の逆接用法から非逆接用法へと変化する、意味の連続性を示すこともできる。