本稿は、平成元年から平成12年までの12年間、政府によって出版された『全国世論調査の現況』(総理府内閣総理大臣官房広報室編)を調査範囲とし、一般の日本国民が夫婦別姓及びこれに関連している諸課題に対し、どのような考えを抱いているかについて考察したものである。近年の世論調査で明らかになったところでは、「夫婦別姓制」に賛成した方がこの制度について、個人尊重、社会生活、プライバシー、仕事関係、男女平等、家系重視の側面から色々な利点を列挙しているが、反対した方が家庭生活、夫婦関係、親子関係の視点から数多くの欠点を想定し、その弊害を訴えている。これは、日本社会全体が、「選択的夫婦別姓制」の施行によって引き起こされる「伝統文化」と「現代社会生活」の矛盾や対蹠に対し、よほどの不安を抱いていることを物語っている。