光生館により出版された《おぼえておきたい日中同形異義語300》という本では、日中同形異義語の微妙な差異を多くの例文によって説明している。語嚢の的確な使い分けが、翻訳・通訳の角度から見た場合、きわめて重要な問題なので、筆者の担当している日本語翻訳・通訳のクラスでも、この本を自習教材として学習者に読ませている。しかし残念ながら、この本の例文の中日対訳には、誤訳または誤訳とまで言えなくても議論される余地のあるようなものが多数見られる。学習者に読ませる前に、それらの不適切な対訳を指摘しておく必要がある。そこで、本稿ではページを追ってそのような対訳を取り上げ、一つ一つ分析して改訳してみる。