戦後の日本人の法意識論についての研究は、大別して言えば理論研究と実態調査研究とに分けることができる。法意識実態調査は70年代においてー時的に盛んとなったものの、その後沈静化した。そして、90年代に入り、70年代に比べてより規模の大きな調査手法が現れた。では、日本国内でー時的にしばしば行われていた実態調査は、10数年間の間になぜ沈静化したのだろうか。仮にこの問いに対する回答が、そのような法意識実態調査にどうしても克服できない限界があるからだとすれば、90年代以降に現れた新たな調査手法では、その限界を克服できていると言い切れるのか。本稿では、まず、1970年代から21世紀初頭にかけての各界による法意識実態調査の概況について2例を取り上げて紹介し、次に、これらの実態調査の内容を踏まえた上で、法意識実態調査がいかなる問題点または限界を有するのかを考察する。