新渡戸稲造は有名な日本農学家、教育家であり、厖大な著作を世に残し、かつて『武士道』で世界中に名を知られている。また『修養』等の修養関係著作によって、当時の日本の青年学生や社会一般の方々にも深く影響していた。だが、従来の新渡戸研究は、ほとんどが新渡戸の生涯や『武士道』、キリスト教信仰などに偏っているか、彼の全著作集『新渡戸稲造全集』の中心としているものや、当時に影響力をもった修養関係著作全体に関する研究はあまり見られない。本研究は、新渡戸著作研究の一端として、新渡戸著作をすべて再整理して分析することによって、次のことを明らかにする。すなわち、新渡戸は『武士道』で国際的に有名だが、彼の全著作からしてみれば、その重点著作グループは4 つである。また、その最たる重点は『武士道』一点にあらずに修養関係著作にある。以上のことを踏まえたうえで、その著作グループの位置づけとその背景を探ることを試みる。