料理文化を言語にたとえるなら、古代から日本に伝播した中国料理や中国食品は外来語にあたる。外来語を自国語に翻訳するのとおなじように、中国起源の食品を日本料理の体系に適合するように変形することがおこなわれてきた。その具体的事例として、中国起源の麺候料理をとりあげて考察してみよう。麺係料理が歴史的に定着したのは、箸と碗形食器を使用する東北アジアにおいてである.製麺法の原理が中国から伝来すると、中国にはない日本独自の麺料理が発達し、各地方で特色ある麺の食べ方が成立した。すなわち、外来語が翻訳されて方言として定着したのである。近代において、中国風の麺料理が再輸入されたが、それも変形され、国民料理として全国に普及すると、つぎの段階で地方料理化した。日本料理化した「ラーメン」から方便麺が発明され、現在ではグローバル化した食品として世界に普及したのである。