本稿は、北京オリンピックで国技(水泳、卓球、テコンドー、柔道)に出場したオーストラリア・中国・韓国・日本選手(コーチ・監督・強化委員長を含む)の談話を分析し、その類似点・相違点を明らかにすることで、談話に表出されるスポーツと国家意識・各国文化との関わりについて言及した。それらは以下の3点にまとめられる。1.国技に携わるということは、国民の期待を一身に背負い、敗北は許されないということで、どの国の選手も非常なプレッシャーのもとで競技を行っていることが窺える。2.オーストラリアの選手は、肯定的な意味を持つ語彙を多用し、中国の選手は否定的な意味を持つ語彙を多用している。韓国の選手は肯定的、否定的両方の語彙を使用している。3.日本の選手に見られる「一本」は、修練による美しさ、人格の高まりという意味合いを持ち、勝敗だけでなく、その「一本の美学」にこだわる特殊性が談話に表出している。