2003年度日本語教育学会秋季大会で、「新しい日本語教育文法―コミュニケーションのための文法をめざして―」というシンポジウムが開かれた。以来、日本語教育のための文法研究が再び注目されるようになり、今日まで来ている。本稿は、その一連の研究の理念に賛同し、文章・談話の観点から私見を述べるものである。具体的には以下のことについて論じた。a. 「運用能力のための語学知識」の概念。b. 本当の理解が適切な産出につながる。c. 表現全体の中で部分的構成要素を捉える視点も必要だ。d. 文脈重視の研究視点は文レベルと異なる研究成果を出す。e. ジャンル別の視点は言語使用の場を忠実に反映する。f. 事実と意見の峻別に関する課題に取り組む必要がある。g. 概念とともに、形式による理解方法も重要である。